琵琶湖の東側、近江八幡から彦根を中心に、その後方一帯に広がる地域を湖東地域といいます。 |
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百済寺は、推古天皇14年(606)、聖徳太子が建立したという伝承がある。
明応7年(1498)の火災で全焼し、数年後の文亀3年(1503)の兵火でも焼失、この2回の火災で創建以来の建物、仏像、寺宝などが灰燼に帰してしまった。再建したものの天正元年(1573)には信長の焼き討ちに遭い、またも全焼している。
本堂をはじめとする現在の堂宇は慶安3年(1650)の再興によるものである。紅葉は本坊庭園、表門より下側の参道、弥勒半跏像周辺、鐘楼付近がポイントとなるが、特に本坊庭園がベスト。
参拝時は、紅葉の進み具合がまだこれからという感じで、最盛期を迎えていた永源寺よりもピークは遅い感がある。
永源寺から百済寺へやってきました。
百済寺の駐車場は参道を半分くらい上ったところにあるので、長〜い石段を上らずに済みます。
入口に当たる山門(赤門)から本堂までの長さが600mと、三山で一番長いと言われています。
参道の両側には石垣が築かれていますが、これらは敵兵襲来に備える為の石垣で、最盛期には数百の僧坊が軒を連ねていたという。
そんな歴史がが伺われる参道です。
参道の紅葉鑑賞ポイントは、拝観入口である表門から下の方なのですが、まだ少し時期が早いようでした。
駐車場の端に石段があり、上り切ったところに本坊入口の門があります。
門の中は平場になっており、 本坊である喜見院、庫裏などが建っています。
やはりこの時期は参拝客が多く、賑わっていました。
写真の右端に見える屋根は表門で、ここで拝観料を納め、参道に出てひたすら石段は上らなければなりません。
でも、半分ほどは車で上がってきているので、少し頑張ればよいだけです。
蛇行しながら続く石段をしばし上ると、上の方に仁王門が見えてきました。
仁王門は、信長の焼け討ちで焼失した後に建てられましたが、老朽化が進み大正時代に再度建替えられたのだそうです。
三間一戸の門には大きな草鞋が掛けてあります。
五木寛之氏の「百寺巡礼」で、百済寺参拝の折、この大草鞋に触れて、百ヶ寺満願を達成されたというのが話題になって、脚光を浴び始めているそうです。
仁王門なのに金剛力士がいないと思ったら、正面を向いているのではなく、門の中でお互いが相対して向き合っていました。
仁王門と参道の石段という風景は、三山ともよく似ています。
百済寺のこの部分は常緑樹が多いので、紅葉の鑑賞ポイントではありません。
さて、本堂周辺の紅葉はどうでしょう。
まだまだ、といった感じです。紅葉樹木が少ないのかも知れません。
鐘楼付近に真っ赤に染まるカエデがありますが、多少色づき始めたかなという状況でした。
「昭和の名鐘」を撞こうと、列ができていました。
石垣の上に建つ国指定重文の本堂は、信長の焼き討ち後、天正12年(1584)仮本堂が建立され、慶安3年(1650)に再建された建物です。
西明寺や金剛輪寺の本堂同様、天台仏堂の様式に則り、内外陣の引違格子戸による仕切りや縁の巡らせ方で、内外陣の空間秩序を保持してます。
内陣の厨子には秘仏本尊の十一面観音立像を安置しています。
本堂をお参りし、鐘楼の先から緩やかな坂を下って来ると、途中に弥勒半跏石像が立っています。いや、座っています。
この辺りも紅葉が綺麗なのですが、色づき始めといったところでしょう。
一週間後はもっと綺麗に色づいていると思います。
訪れた時の紅葉鑑賞ポイントNo1は庭園でした。
庭園に向おうと参道を下りてくると、喜見院の屋根が見えてきました。
この辺りのカエデはかなり色づいています。
百済寺の本坊は喜見院と呼ばれる建物です。
喜見院には池泉回遊式庭園があって「天下遠望の庭園」と称されています。 紅いモミジが鮮やかな本坊脇を入ると庭園が広がっています。
当然のことですが、園を巡る通路が狭いので、この時期は譲り合いながら歩き回るので、落ち着いて鑑賞するのが難しいです。
永源寺の燃える様な紅葉を見た後だけに、残念ながら感嘆にはちょっと遠かったです。
…ということで、金剛輪寺へ向かいました。
百済寺データ
名 称 : 釈迦山 百済寺
本 尊 : 十一面観音
宗 派 : 天台宗
所在地 : 滋賀県東近江市百済寺町323 0749-46-1036
拝 観 : 8:30〜17:00
拝観料 : 600円
札 所 : 近江西国観音霊場 第16番
神仏霊場 第141番
湖国十一面観音霊場 第10番
びわ湖百八霊場 第64番
公式サイト : 天台宗 湖東三山 釈迦山 百済寺
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金剛輪寺には参道をバイパスする駐車場がないというのが基本ですが、お願いすれば本堂駐車場へのゲートを開けてくれます。
でも、紅葉を鑑賞するには不向きなので総門付近の駐車場を利用します。
金剛輪寺は総門から紅葉が楽しめます。
門の前でカメラを構えている人を多く見かけます。
総門を抜けて、緩やかな坂道を色とりどりの紅葉を眺めながら行くと拝観受付があります。
拝観料を納め、明寿院庭園を目指し、しばし緩やかな紅葉の坂道を上って行きます。
やがて正面に小さなお堂が出てきます。
この風情のある小さなお堂は、阿弥陀如来を祀る西谷堂です。
ここから、右手の石段を上ってもよいのですが、順路を示す看板は左に折れて名勝庭園のある「明寿院」を指しています。
明寿院庭園は国指定名勝で、美しい紅葉が見られるので、立寄るのがお奨めです。
西谷堂周辺の紅葉も綺麗なので見逃せません。
いよいよ、金剛輪寺で最高の紅葉鑑賞スポットである本坊「明寿院」へ入ります。
明寿院の門周辺の紅葉です。
明寿院の建物を通して庭園が覗けます。
人がいないと絵になるのですが....。
縁側に腰掛けて庭園を眺める人が後を絶たないので、仕方ないですね。
明寿院庭園は、池泉回遊式庭園といわれるものです。
桃山、江戸初期、中期の三庭からなるそうですが、その場で説明を聞かないと分かりません。
国指定名勝であることは何となく分かりましたが。
これも、後で分かった話ですが、園内のモミジは、「血染めのもみじ」と呼ばれているそうです。
晩秋の深紅に染まる、色鮮やかな状態を指して言うらしく、あと5日くらい経てばそうなるのかも知れませんね。
再び石段の参道に戻って本堂を目指します。
ここの参道には延々とお地蔵さんと風車が供えられていて、恐山のようにちょっと微妙です。
とにかく長い石段が続きます。 他の二山と違って、参道の端から端までを歩くので長いです。
段差のところが天然石なので平ではなく、段差もまちまちなので注意が必要です。
まだかよ〜 と思っていたら、よく見た光景が視野に入ってきました。 やっと二天門です。
八脚門の二天門は室町時代中頃に建立されたそうで、当初は楼門だったのを江戸時代中期に二階部分を取り壊し、現在の形になったと伝えられています。一応国指定重文です。
百済寺は下る坂道が別にありましたが、金剛輪寺はここ1本なので非常に混んでます。
本堂に着きました。
桁行七間、梁間七間、入母屋造、檜皮葺という大きな本堂は、弘安11年(1288)の建立で、鎌倉時代の代表的な和様建造物として国宝に指定されています。
本尊は秘仏の行基作といわれる聖観世音菩薩。
内陣には阿弥陀如来坐像、大黒天半跏像、不動明王立像、慈恵大師坐像など国指定重文の仏像がゴロゴロと安置されています。
本堂の正面、及び右側面周辺の紅葉は、あと一息で最盛期を迎えるといったところでしょうか。
縁に上がって、山門付近と鐘楼付近を眺めたのが下の写真です。 常緑樹を背景に色づいたカエデが、ひと際浮だって綺麗です。
本堂脇へ回ってみました。紅葉はこちら側が綺麗です。
紅や黄に彩られた樹々の向うに「待龍塔」と呼ばれる国指定重文の三重塔が見えます。
寺の説明によれば、古文書に寛元4年(1246)4月9日の記があり、本堂より40年余り先に建立されたのだそうです。
お昼時間も回ったところなので、再び長い石段を下って、食事処「華楽坊」へ向かいました。
本堂へ上がる前に予約しておいた精進料理の「お箱精進」をでいただきました。 小箱が3段の引き出しになっていて、扉のなかにはご飯が入っています。
華楽坊のある一帯は紅葉が素晴らしかったです。
下は華楽坊内からの眺め。
綺麗な紅葉を鑑賞しながらの食事は格別です。
ゆっくりと休んだところで、本日最後の西明寺へ移動しました。
金剛輪寺データ
名 称 : 松峯山 金剛輪寺
本 尊 : 聖観音
宗 派 : 天台宗
所在地 : 滋賀県愛知郡愛荘町松尾寺874
0749-37-3211
拝 観 : 8:30〜17:00
拝観料 : 600円
札 所 : 近江西国観音霊場 第15番
神仏霊場 滋賀3番
湖国十一面観音霊場 第11番
近江湖東二十七名刹 第10番
公式サイト : 天台宗 金剛輪寺
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西明寺には山門前と参道途中に駐車場があります。山門前に駐車すると、足元の悪い石段を延々と上らなければなりません。
山門から少し離れた国道沿いに、参道脇の駐車場へ上がる通路があります。 途中、専用の橋で名神高速をオーバークロスして山へ上がって行きます。
本堂へすぐ行きたい、体力を温存したいという向きには上の駐車場がお奨めです。
駐車場から境内に入ると、伝教大師最澄像が立つ広場にでます。
先ずはこの辺りの紅葉を鑑賞してから、拝観受付をして参道に入ります。
受付脇の参道に立って左を見ると、山門から続いている石段が見えます。
よかった〜、ここから入って。と思わず呟いてしまいます。
山門からここまでが約300m。参道全長が約390m程だから、もう着いたようなもの。
距離を知って、やはり「ここから入って良かった」なのです。
駅の階段とは訳が違い、天然石を並べた石段なので足元に気を遣い、紅葉は二の次になってしまいます。
大型バスは山門前の駐車場しか使えないので、大手のツアーだと、やはり下から歩かされます。
さあ、湖東三山最後の参道に挑戦です。緑の合間に見える紅のカエデを鑑賞しつつ一段一段登ります。(写真左)
もうすぐ先に二天門が見えてきました。(写真右)
二天門到着。門周辺の紅葉が綺麗でした。
本堂周辺の紅葉はちょっと控えめで清楚ば感じです。金剛輪寺のような派手さはありません。
七間四面の檜皮葺入母屋造の大きな本堂は、鎌倉時代前期の和様建築で、中世天台仏堂の代表作として国宝に指定されています。
軒下の小壁には出三斗と蟇股が規則的に並んでいて、装飾のように美しいです。
正面や向拝の蟇股には細工が施され、側面の蟇股とは様式が異なっています。これは工事をした時代が違うからだそうです。
正面に三間の大きな向拝を設け、外陣部のみ縁を巡らしていますが、高欄が無いため、危険防止用の柵が置かれています。
堂内は天台仏堂の様式に則り、外陣と内陣を菱格子の欄間で仕切り空間秩序を保っています。
本堂周辺では、下のような紅葉が眺められます。
本堂と同様、国宝に指定されている鎌倉後期に建立された三重塔は、屋根の葺替修理中でした。 (平成24年3月終了予定)
紅葉と三重塔を絡めてカメラに収めたかったのですが、ちょっと残念です。写真右は葺替工事前。
シートで覆われていますが、仮設階段があって屋根を葺き替えている様子を見ることができます。
塔の檜皮葺屋根を葺き替える作業を間近で見られるなんて、そう滅多にあることではないです。 貴重な経験をしました。
西明寺の三重塔は逓減率(初重と三重の幅の比率)が大きく、安定感を持たせた構造になっています。
初重の内部には、大日如来を安置しています。
二天門を出て、帰路に着きます。(写真は二天門からの眺め)
西明寺データ
名 称 : 龍応山 西明寺
本 尊 : 薬師如来
宗 派 : 天台宗
所在地 : 滋賀県犬上郡甲良町池寺26
0749-38-4008
拝 観 : 8:30〜16:30
入山料 : 600円
札 所 : 西国薬師霊場 第32番
神仏霊場 滋賀4番
公式サイト : 湖東三山 西明寺の公式ホームページ